『カラフル』、森絵都著

カラフル (文春文庫)

 

この本はいろいろ考えさせられる話だと思います。

死んで魂となった主人公「ぼく」に「プラプラ」と名乗る天使が現れる。そしてプラプラは「ぼく」にたった今死んだ別の体で生活しろと「魂のホームステイ」を強要する。

最初は赤の他人である「小林真」としての生活に乗り気でなかった「ぼく」も徐々にその家族や同級生と向き合うようになっていく。あらすじはこんな感じです。

この本の好きなところは描写がリアルなところです。

この話では小林真の家族や同じ学校の同級生にもスポットが当てられます。真の母親は一見家庭的でいい母に見えますが実は不倫をしており、気になっている同級生の「ひろか」はお金のために援助交際をしています。

僕は最初主人公が「ひろか」の援助交際を辞めさせる流れになるのかなと思いましたが結局「ひろか」は援助交際を辞めることはありませんでした。「ひろか」は援助交際でお金を稼ぐ理由として「 若くて自分に価値のあるうちに高級できれいなものを身に着けたい」「大人になって自分の力で稼げるようになったときでは意味がない」といったような発言をします。このきれいごとで終わらない感じがとてもリアルで新鮮な感じがしました。

母親に関しても、息子の真に対して誠実に接する一面と実は不倫をしていたという不誠実な一面を持っている一見矛盾した感じがとても複雑で人間らしいと思います。

このような裏の一面ががとても魅力的で引き込まれる原因なのかなと思いました。